大人の思いやりが子どもを救う
大切なのはバランスよく育てること

藤吉義純さん(加茂野町)


 花は、種をまいてから咲くまでに一定の期間があります。その間に適切に手を加えてあげれば、より美しい花を咲かせてくれます。
 花を子どもに置きかえるなら、その子らしく育つことができるようよう、みんなで見守るのが理想です。しかし親は勝手なもので、早咲きを期待したり大輪の花を望んだりします。だからといって、肥料や水を多く与えても、花はきれいに咲きません。また、放ったらかしにしておけば伸び放題になってしまうし、まして、間違った育て方ではいい花は咲きません。
 「近ごろの子どもは何かおかしい」そう言う人がいます。けれど、おかしく育てたのは大人。しかも、自分がおかしいことに気づいていない大人が多すぎるから、おかしいことが当たり前のこととしてまかり通ってしまいます。これでは社会がおかしくなって当然です。このような「負の遺産」を後世に残さないためには、まず原点にもどることが重要だと私は考えます。原点とは家庭であり、お金やモノに必要以上に頼らないくらしであり、コミュニケーションを大切にすることではないでしょうか。
 子どもにとって、家庭は最も身近な社会。人間としての基本を身に付ける場所です。家族とふれあい、いろいろな体験を重ねて子どものこころが育ちます。しかし、家庭不和、過干渉、無関心、甘やかしなどにより、家庭が適切に子どもとかかわることができないと、子どももバランスを崩します。子どもを責めるのはまちがい、親の責任です。
 どの若芽も美しい花を咲かせる可能性を持っています。見事な花を咲かせるためには、子どもにひとりの人間としての人格を認め、理解することが何より大切だと私は思います。


大きな危機を乗り越えて

大山治夫さん(下米田町)


 昨年3月に起きた東中学校放火事件はショックでした。しかし、そこから得るものはたくさんありました。
 事件後の校舎清掃にはたくさんのPTA会員が参加し、会員の意識が変わったことを実感。たび重なる会議では、どうしたら子どもたちが普通の状態で授業を受けられるかを真剣に討議。これを機に私たちは「行動する東中PTA」というスローガンを作り、自分たちにできることを行動に移そうと誓いました。
 その第一歩が「朝のあいさつ運動」です。生徒の本当の姿を見るため、毎月第3土曜日の午前7時45分から8時30分まで、PTA役員と学級委員が校門で生徒たちに「おはよう」「おはようございます」と声をかけます。校門に立った人に感想を聞くと、「聞くのと見るのとは違う」という答えがほとんど。東中は荒れているといううわさが広まり、不安に思っていたのでしょう。しかし、実際に自分の目で見てそうでないことがわかります。思春期の子どもたちを取り巻く社会環境は変わってきており、いろいろ問題はありますが、みなさんの協力を得てよりよい方向に改善できればと思います。また、家庭と学校の役割分担が崩れてしまった今日、先生がどんなに一生懸命取り組んでいるのかも知ることができました。
 私たちは、子どもに未来を託します。子どもには、明るい未来は自らの努力によって開かれることを教えてあげたいですね。大人には、子どもがいい人材となるように育てる義務があるし、子どもが希望を持てる社会にする義務があります。そして何よりもまず、大人がいい手本を示すことが大切です。
 あの事件以来、本当にいろいろなことを考え、経験しました。ここまでかかわってきて、ようやく「PTAとは本来こういうものなのだ」という実感が、私の心の中に生まれつつあります。どうか地域のみなさんも、あたたかく見守っていただけたらと思います。




今こそ家庭・地域・学校の連体を

渡辺俊幸 教育長


 全国的に少年非行は増加し、戦後第四のピークといわれます。岐阜県の平成10年居住別刑法犯少年率は、当市が最も高く、可茂郡市がすべてワースト5に入っています。これは、子育ての見直し、学校、家庭、地域の本来の役割とあり方を見直すべきという警鐘であると私はとらえています。
 「子供が変わった。普通の子が突然非行に走る」…今の少年非行の特徴はこのように表現されます。その背景には、大人の価値観、教育観の大きな影響があります。大人が変われば、子どもが変わるといわれますが、その通りだと思います。
 戦後豊かな物や便利さを求め、物優先の生活を追求してきました。そのため心の問題を置き去りにしてきました。子育ても然りです。少子化の時代です。今ほど、親の目が子どもに向いている時代はないのではないでしょうか。子どもの幸福は、大学を卒業して、安定した収入が得られる職業につくことだと思いこんでいたのではないでしょうか。子どもの夢や希望に耳を傾け、個性に目を注ぐことがおざなりになってしまいました。子どもの真の自立を考えねばなりません。
 子どもの幸せのために親は日夜懸命に働き、子どもと接する時と場を少なくし、「勉強殿様」と言われるように受験勉強に注目しました。そこで家庭のいこいとしつけの機能を低下させてしまいました。これに加えて少子化は、親の過保護、過干渉を生み、危険なことは親が最初からさせないし、想定される危険を規制によって回避します。かつてのように川で遊泳する姿など見られなくなりました。自ら危険や痛み、工夫などを体験して学習する機会が減り、自立できない子どもが増えました。欲しいものは買い与えますから、子どもは自分で工夫して作ろうとは考えません。いやなことはやらない、がまんができない、満たされ過ぎた現代っ子の姿がそこにあります。
 個人の自由は、地域の結びつきを弱め、地域行事はわずらわしいものと感じられ、かつての「山の講」なども姿を消しつつあります。
 私たちは子どもの幸せを願い、明るい未来を築こうと願っています。今、私たち大人が危機感を持ち、自らをかえりみて、自分達の在り方を見とどけ、見直さねばと痛感します。その時、子どもは必ず夢多い、明るい姿になると信じています。それが今行われようとしている「教育改革」でもあると思います。
 学校は本来のはたらきである教科の学習を中心に、地域のみなさんと共に「生きる力」を培っていきます。
 家庭は、かつてのように、しっかりとしたしつけを行い、「家訓」めいたものをもつこととともに、安らぎの場としなければなりません。
 地域は、「連帯感」がまず大切です。子ども会など多くの活動がなされています。それらを強化、拡大していくため「声かけ運動」を力強く広めたいと思います。
 2002年、学校週5日制が始まります。ますます地域活動の場が必要とされます。「文化の森」は学校教育の重要な場として、また家族が共に遊び学ぶ夢多い場です。市としても多くの施設を有効に活用し、家庭、地域、学校の連帯を支援していきます。夢多い21世紀をつくりあげていきたいと思っています。



あるおかあさんが話してくれたこと

 私は以前、名古屋市近郊の都市に住んでいました。そのまちでは、新聞に載るような少年たちの事件がいっぱい起きていました。今の美濃加茂市には、その前兆がいくつか見られるのでとても心配です。
 たとえば、とてもおしゃれになってきた男の子と女の子。多感な若者たちには、いい情報ばかりでなく悪い情報も伝わっています。若者のおしゃれ度は、非行少年増加の一つのバロメーターでもあります。
 また、市内で進む宅地造成により、市外からの転入者が増え、核家族化が進み、地域のつながりが薄れます。そして子どもは、限られた人や友達としか交流できず、幅広い年齢層とのふれあいがなくなり、心が未発達のまま大人になるのでしょう。そしてその子どもは…。
 男女雇用機会均等法が施行され、女性は仕事がしやすくなり、今後保育サービスなども増えると思います。男性の育児休暇などももっと認められるといいですね。そして余暇が増え、みんなが時間の使い方を知り、子どもと過ごす時間を持ち、地域とのコミュニケーションを大切にすれば、青少年問題を沈静化させることができると私は思います。
 今はみんなが忙しすぎます。


特集/子ども以上 大人未満


子ども以上 大人未満
中学生 高校生 142人に聞きました
意見交換から行動へ
大人の思いやりが子どもを救う
地域の子どもを地域で育てる

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