子育てに楽しい読みきかせを
 子どもに、絵本の読みきかせをしたいけどういうふうにすればよいのか
 また、子どもの絵本はどういう本が良いのか 
 これから、子育てに絵本の読みきかせをしていきたいと考えているお母さんたちと.、自分の子育てを通して絵本の素晴らしさに出会った人との座談会です。


西田  うちの子は10カ月で、そろそろ絵本を読みきかせたいと思っています。絵が飛び出す仕掛け絵本などは喜びますが、どういう絵本を読んでやればよいのか教えていただきたいです。
今瀬  私は本屋さんへ行きますが、絵本がありすぎて、一体どの絵本がよいのかわかりません。
矢島  みなさんのお話をうかがいますと絵本選びに戸惑ってみえるようですね。私は、気持ちの上で子どもが本当に楽しめる本、つまり「ことば」の持つ面白さ、リズム感からお子さんに本を選ばせることが、大切だと思います。
 小さいお子さんには、少し難しいかもしれませんが・・・。 
 子どもの「眼」というのは、確かだと思います。大人が見て面白い絵本と子どもが見て面白い絵本は、違うと思います。
 ただ一つ言えることは、「よい絵本」は、何か訴えるものがあると思います。
渡辺  私は、この年齢のお子さんの絵本には文章はあまり必要ないと思います。子供は、最初絵本を持つことが楽しかったり、ページをめくることがうれしかったりするようです。
 そのほかに、年齢的に持ちやすい大きさもポイントと思います。内容的には、身近な動物や乗り物、お母さんや自分と同じくらいの子どもが出てくるなど、生活に結びつくような絵本を喜ぶでしょう。
 私は、絵本の読みきかせより前に、大切なことがあると思います。それは、赤ちゃんに、生まれたときから心のこもった語りかけをしてあげることとか、子守歌を唄ってあげることです。 
 それが、絵本の読みきかせにつながると思います。子守歌や絵本に共通するのは、「ことば」のもつリズムの美しさではないでしょうか。
 お子さんに読みきかせをされるときも、そのことを大切にしてあげてほしいです。
矢島  私の小さいときは、母親に読んでもらったという記憶があまりないですね。自分の子どもに読みきかせをして、初めて絵本の楽しさを知ったように思います。
 渡辺 私の読みきかせの原点は、幼い頃寝るときに父が語ってくれた昔話にあるように思います。その当時の情景は、よく憶えていて、今でも思い出すことがありますよ。
安保  私も、憶えがあります。私の場合、お婆ちゃんが昔話を語ってくれたのをはっきり憶えています。
 だから、この子がもう少し大きくなったら、私も読みきかせをしてやりたいと思っています。
渡辺  話を聞くということは、映像がないだけに、自分の中で、想像力を働かせることになり集中力が必要ですね。
矢島  自分の家族に読んでもらったということは、大きくなってから情景として思い浮かんでくるのではありませんか。
 みなさん そうですね。
今瀬  何か子どもが気に入るような絵本を読んでやりたいと思いますが、初めてのことでわかりません。
矢島  でも、それは今日お会いしたみなさんだけでなく、これから子育てをされるみなさん誰もが、思われることだと思います。
渡辺  最近は、良心的な絵本と絵本ブームに便乗した絵本が、本屋さんに並んでいると思います。
 今日持ってきた本は、おすすめできるものばかりですよ。
矢島  小さいお子さんには、長い文章を読んであげるよりも、絵や構図が単純な絵本が、よいのではないですか。
今瀬  友人から、子どもの本は、明るい配色の本が良いと聞いていますが・・・。真っ赤な色の本とか。
渡辺  あまりきらびやかというのは、どうかと思います。
 お菓子で言えば、お砂糖や着色料がたっぷり入って一見子どもが喜びそうなもの、つまり子どもに媚びるような本は歓迎できませんね。
矢島  私も、そう思います。
渡辺  私は、絵本の内容が教育的であってほしいとか、何かを育ててほしいとか、望まない方がよいと思います。
今瀬  でも、最近そういうしつけなどの絵本が多いです。子どもが見て楽しい絵本よりも、つい「しつけ」絵本に目が向いてしまいます。
安保  そうなんです。やはり気になるのは、教育的な本に向いてしまいますね。
矢島  お気持ちは、わかりますが、絵本を親子で楽しんでほしいですね。
今瀬  私は、絵本を子育て支援センターで借りていますが、小さい子どもを抱えていると図書館までは、行けないですね。
 もっと身近で絵本が借りられたらいいです。気に入った絵本を全部購入するわけにもいかないですし・・・。
渡辺  そうですね。でも今の図書館は、幼いお子さん連れでも安心だと思いますよ。それに年齢にあったよい図書も多いと思います。
今瀬  うちの子は、絵の単純な絵本には、興味を示しますが、読みきかせには興味がないように思えるんです。 西田 そうそう。うちも一緒。
安保  はやりの仕掛け絵本や、絵が飛び出す本などは、子どもが喜ぶから親は、つい与えてしまいます。昔話などは、全然興味がないようです。
矢島  まだ、年齢的に早い気がしますね。
安保  昔話といっても、短い物語なのですが・・。
渡辺  お子さんの興味のあることの絵本を読んであげることが、絵本の世界に入るきっかけになると思います。
 ただ、仕掛け絵本などは、テレビと一緒で、刺激を喜ぶだけになりかねません。内容に興味のありそうな絵本を選んであげることが大切ではないかと思います。
今瀬  言葉や文章が少ない絵本は、親が想像して読んでやってくださいと以前聞いたことがあり、どうしても文章がある本を選んでしまいます。
渡辺  文章が短くてもそのまま読まれることを、私はすすめます。
今瀬  例えば、テントウムシが出てくる絵本では、文章がなくても「このテントウムシさんは赤いねー」などと説明的に話してしまいます。
西田  そうなんです。子どもがいろいろ理解してくると、思わずうれしくなってしまい、文章が短くてもつい説明しながら読んでしまいます。
渡辺  一冊の絵本を作るとき、作者たちは、読者の年齢にあった絵本を作ろうと言葉なども選んでいるそうです。  
 だから、そのまま読んであげることで、作者の気持ちがお子さんに伝わるのではないでしょうか。
 でも、子どもが話しかけてきたときには答えてあげたり、そこから親子の会話が弾んだりするのは、自然なことと思います。
 お子さんは、お母さんの声を聞きながら絵を見て自分なりにいろんなこと考えています。また、親子で読み終わった後の余韻を大切にしてほしいですね。
矢島  同じような話しになりますが、お母さんに絵本を読んでもらっているときは、お子さんの心は絵本の中に浸っていると思うのですね。 
 だから、お母さんは読みながら、いろいろ質問はしないでくださいね。きっと、お子さんにとって幸せな時間だと思うのです。
 子どもは、本を探す喜びを知っていくと思います。本屋さんなどで自宅にある本と同じ本を見つけたとき「あっ、これ家にある本と同じや」などというように。
 我が家でも、子どもが小さいときこんな経験があります。それは、夏の2カ月間子どものリクエストで同じ絵本ばかり読んであげたことです。
その子は、現在高校3年生ですが、今でもその絵本を見ると幼い頃を懐かしく思うそうです。
渡辺  お子さんにも思い出となりますが、親さんも子育てのよい思い出となったことと思います。
 だから、同じ絵本を読んでとせがまれたら、読んであげてください。
矢島  ところで、絵本について面白いお話があります。それは、絵本の絵が語るということです。
渡辺  先ほども少しお話ししましたが親は一生懸命文章を読み、絵をじっくり見るときがないと思います。 
 子どもたちは、親に読んでもらいながら絵をじっくり見ています。そうすると絵の中にいろんな発見をすることがあります。
矢島  私は、ある絵本で腕に小さい点を見つけ、出版社のミスかと思っていたらなんと注射のあとだったんです。そのことに娘が気づき、親子で「あっ、そうかと」思ったことは、楽しい思い出です。
渡辺  そういうことがあると、親ももう一回読んであげようかと思うのです。
渡辺  幼児期は、安保さんが昔話を聞かせてくれたおばあちゃんを大好きだったように、親子の密接な信頼関係を形成する大切な時期ではないかと思います。
 私は、ぜひお父さんの協力を得てよい親子関係を築いてほしいと思います。子どもと共有できる時間は、長い人生の中で何にも替え難いものです。 
 お子さんにとって、お母さんやお父さんが読んでくれる時間は宝物なのです。
矢島  家族って、共有できる何かがあると思うのです。我が家では、今も子どもが言います。「お父さんは、読
むのはあまりうまくなかったけれど、よく読んでくれたね」と。そこには、読むのが上手、下手でなく、その時間を共有できた喜びがあったのではないかと思います。
渡辺  我が家も、同じです。今、お母さんが、そういう時間をお父さんにプレゼントしてあげることが、後々の良好な親子関係につながると思います。
今瀬  うちは、夜勤があるので寝る前に読み聞かせは難しいですが、夜だけでもないですよね。
渡辺  そうですよ。お父さんがあぐらをかいて、ひざの中で読んでもらうのは、子どもにとって愛されていることを実感でき、心地よいものです。
矢島  小学校へ上がると、今はやりのTVゲームなどの誘惑がありますが、本を読む面白さを幼いうちに身につけていれば、また、そのうち本を読むようになると思います。大きくなっ
てから、本を読みなさいといってもなかなかできないと思います。
渡辺  お子さんには、今の時期に絵本の世界の楽しさを、教えてあげてほしいですね。
安保  学生時代、小説を読みふける同級生をうらやましく思いました。
渡辺  お子さんを本嫌いにするには、簡単なんですよ。一言、「自分で読みなさい」です。文字を覚えたての子どもにとって「読む」作業は、大変な労力が必要です。
矢島  文字を追うことに必死で、話の内容を理解できないと思うのです。絵本を読んでもらっているときが、子どもにとって幸せな時間ではないでしょうか。
 繰り返しになりますが、お子さんがもういいと言うまで、一緒に読んであげてほしいですね。
安保  本を読む時間についてうかがいたいですが、寝る前など子どもの気持ちが落ち着いているときがよろしいですか。
渡辺  そうですね。お昼寝の時とかおやつの時などでもよいと思いますよ。それに、少しきつくしかったかなと思うときなど、頃合いを見て絵本を読んであげると子どもはいやされると思いますよ。
 絵本が「精神安定剤」になると思います。少し横道に入ることになりますが、幼児期における親子関係の希薄さが、思春期の過食症や拒食症などの摂食障害の原因の一つということがわかったきたそうです。
 幼児期に絵本などを通して楽しい親子関係が築ければよいと思います。
今瀬  今日はいろんなお話が、聞けてとてもよかったです。でも、こういう情報は、保育園などに入園していれば知ることができると思うのですが、保育園に入園もしていない小さい子どもを持つお母さんたちに聞いてほしいですね。
安保  私もそう思います。本の好きな子どもに育てたいという気持ちはあっても、どういうふうにすればよいのかわかりませんでした。
西田  そうですね。先ほどの、絵本に余計な言葉はいりませんということでも、こういう機会がないと、きっといつまでも、いろいろ説明的に本を読んでいたと思います。子どもを本好きにしたいという気持ちは多くのお母さんが思っていると思います。
今瀬  こういうお話が聞ける機会がもっとあるといいですね。

渡辺富佐子さん (太田町在住)             
     
長年幼児教育に携わり、絵本の読みきかせの大切さを幼児教育現場からお母さんたちに、語っています。現在、中部学院大学幼児教育科非常勤講師。
矢島良子さん (蜂屋町在住)
          
自分の子育体験から、絵本の魅力にひかれて、現在地域文庫を自宅で開設して、多くの子どもたちに読書の楽しさを広めています。
安保増巳さん (本郷町在住)         
     
お子さんは、長男亮佑くん(1歳4ヶ月)です。最近、亮佑くんは、工事関係の車の絵本が好きで、お父さんと一緒に見ているそうです。
今瀬みどりさん (中富町在住)
     
由花ちゃん(1歳4ヶ月)に、楽しい絵本を読みきかせてあげたいと参加されました。
西田理香さん (山之上町在住)
    
現在、夏美ちゃん(10ヶ月)の新米ママさんです。絵が飛び出す仕掛け絵本に興味を持ちはじめたそうです。


特集/本との出会いは『楽しい 読みきかせ』から


本との出会いは『楽しい 読みきかせ』から
子育てに楽しい読みきかせを

バックナンバー
Topに戻る