手作り太鼓はみんなの汗と涙の結晶だ

 太鼓がすべて手作りなのも牧野太鼓の魅力。失敗を繰り返しながらもみんなで力を合わせ、これまでに35個の太鼓を作り上げました。
 太鼓作りは演奏と一緒で、チームワークが大切。子供たちのできることは子供たちにまかせ、危険な作業を大人が受け持ちます。また、板金屋さん・大工さん・八百屋さんなどが得意とすることを太鼓作りに生かします。牧野太鼓の太鼓は、みんなの汗と涙の結晶、宝物です。
 今回は高さ92cm、直径90cmのウィスキー樽を利用して太鼓を作ります。さぁ、みんなが仕事や学校を終えて作業場に集まってきました。


工程1

 太鼓の胴には、ウィスキーやワインの樽を使う。樽の一部のたがを外し、表面を削る。ペーパーで磨く子供たちも手慣れたもの。樽はいい酒ほどいい音になるとかならないとか…。

工程2

 磨いた樽に、色むらができないよう慎重に黒の塗料を吹き付ける。さらに表面にニスを塗ってつやを出す。

工程3

 なめして(油や毛を取り除いて)乾燥させた牛の皮を、太鼓の大きさに合わせて裁断する。今回は、太鼓の両面を張るのに牛一頭分の皮が必要。また、牛の皮をなめすのに約1カ月かかる。

工程4

 1日水につけた皮を樽(太鼓の胴)に張る。響きのいい音を出すには、牛皮をなるべくきつく張らなくてはならない。縦に置いた樽の下に車のジャッキを置き、皮にひもをつけてゆっくりと少しづつ引張っていく。皮の上に大人が乗って、さらに皮を伸ばす。

工程5

 たたいて音を確かめながら限界まで十分に皮を伸ばしたら、皮が切れる直前に約2cmの黒いビョウで皮をとめる。ビョウは曲げたりしないよう、バランスよく素早く打ち込む。

工程6

 飾り金具をつくる。型に合わせて切断した銅版を磨き、金色に塗る。また鉄の棒を熱して曲げ、ねじと溶接して取手を作る。菊の模様もたがねで加工する。

工程7

 樽の横に穴をあけ、飾り金具をビョウで固定し、その上に鉄の取手を付ける。

工程8

 慎重に太鼓を裏返し、反対側の皮を同じように張る。音の響きを確認しながら慎重に皮を伸ばしていき、ビョウで止めて完成。皮が乾くとさらにピーンとなりいい音になる。この太鼓の完成まで約2カ月かかった。



スポット

子供たちも太鼓作りをお手伝い

 「ねぇ何やっとるの?」学校が終わると、太鼓を作っているお父さんやお兄さんのところへ子供たちがやって来ることも。学校で習わない太鼓作りに、みんな瞳を輝かします。
 子供たちは簡単な作業を手伝います。大人のやり方を見て、少しずつ道具の使い方を覚えていく子供たち。かつて、父親の日曜大工を手伝い、子供たちは道具の使い方を覚えました。しかし「危ないから…」といわれ、いつしか家庭で子供たちが道具を使う機会は減ってしまったようです。そんななか、お父さんやお兄さんから道具の使い方も学ぶ太鼓づくりは、子供たちにとって大切な体験の場でもあります。


ケヤキの太鼓は音も仕上がりも最高

 牧野太鼓の太鼓の材質は主に2種類。比較的大きい太鼓(直径60cm以上くらい)は、ワインやウィスキーの樽を利用して作ります。
 比較的小さい太鼓は、ケヤキをせっせとくりぬいて作ります。ケヤキは、家の柱などに使われる堅い材質の木。直径30cm高さ30cmの太鼓を作ろうとけやきをくりぬくのに、約1カ月もかかります。しかし、けやきの太鼓は樽の太鼓よりも音がよく、木目も美しくきれいに仕上がるのが特徴です。


アルミ缶を集めて太鼓を作る

 牧野太鼓は、アルミ缶回収に積極的に取り組みます。メンバーは各家庭でアルミ缶を集め、年に4回市が行うアルミ缶回収に持ち寄ります。1回につき平均で約200キロ(量では2トン車2台分)、金額にして1万2千円ほどです。
 会費のない牧野太鼓にとって、アルミ缶回収の収益金は大切な収入源。この資金でバチや皮、はっぴなど必要なものを購入したり、演奏会への交通費などの一部に充てます。アルミ缶回収はごみの減量や資源のリサイクルにもなり、まさに一石二鳥です。



鼓動が心に響く 牧野太鼓 目次

鼓動が心に響く 牧野太鼓
人が集い、太鼓が生まれ、鼓動が響いた
「太鼓を聞いてよかった」その言葉がうれいい
オーストラリアの大地に牧野太鼓が響きわたる
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