「太鼓を聞いてよかった」その言葉がうれしい

太鼓は、打ち手と聞き手の心のふれあい

森 明美さん(牧野)

 「演奏が終わって、一人でも多くの打ち手が『たたいて良かった』、聞き手が『聞いて良かった』と思えたら最高ですね」牧野太鼓保存会会長の森明美さんは、太鼓は打ち手と聞き手の心のふれあいだといいます。「だから、自分たちの太鼓を発表できる場所があることが幸せ。太鼓を聞いてもらえて、牧野や美濃加茂の名前も知ってもらえますから」
 演奏後、森さんの疲れがふっとぶのは、聞き手から『良かったよ』の一言を聞いたとき。「自分たちの太鼓を聞いてくれた人に、『ありがとう』と伝えたい。周りの人に支えられてここまで来れたから」と森さん。 牧野太鼓のメンバーには、子供たちも多い。「太鼓を作って演奏することが、子供たちの自信や喜びにつながれば」と森さんは願います。「例えこの街を離れても、夏に帰ってきたら夏祭りでたたいてほしい。一度出ていっても、気軽に戻ってこれる牧野太鼓でありたいですね」 メンバーにとって牧野太鼓はクラブ活動のよう。家庭や仕事・学校などの暮らしのなかに太鼓があります。「無我夢中で太鼓をたたいているとき、ほかのことを忘れられる。太鼓はみんなが楽しめ、暮らしのなかでストレスを発散できる場です」
 牧野太鼓は、10月に念願のダボでの公演と太鼓作りを果たしました。「笛や琴などと和楽器のジョイントコンサートをやってみたい。みんなが、それぞれ違うパートをたたく曲や木曽の源流から大海にそそぐまでをイメージした曲を作りたい。50人で練り太鼓を打ち鳴らしたい…」森さんの夢、牧野太鼓の夢は、さらに大きく膨らみます。



いつか、5尺の太鼓をたたきこなす

佐合充広さん(牧野)

 24歳の佐合さんが牧野太鼓と出会ったのは7年前の初夏。初代会長の浅野さんの仕事場に、フラッと寄ったのがきっかけとか。「地元の人たちが、太鼓をやっていることは知っていた。そこで浅野さんに『太鼓をやらんか』と、一杯のコーヒーと一緒に勧められて」と佐合さんは苦笑い。いまだに、そのときのコーヒーの味が忘れられないとか。
 初めて練習に参加した佐合さんは、大きなショックを受けます。必死に練習する佐合さんを横目に、幼い子供たちが笑いながら、軽やかにリズム良く太鼓をたたいています。「なんで小さい子供にできて…くやしい。きっと俺にもできるはずや」
 その年の夏祭りが2週間後に迫ったとき、「今度の祭りは、お前が太鼓のソロをやれ」と森さんの一言。1曲たたくのがやっとだった佐合さんは、「カーステレオで太鼓のリズムを聞きながら、ハンドルをたたいた」と仕事中にも太鼓の特訓。そして祭りの当日、佐合さんの立ち位置は最前列の正面。「周りはお客さんだけ、ほかのメンバーは視界に入らない。ただ、ひたすら無我夢中でたたいた」演奏が終わると、興奮して足や指の震えが止まらなかったといいます。「肉体的にも精神的にもきつかったけど、感無量だった。このときが、太鼓にはまった瞬間」
 佐合さんは今、舞台の中央で「5尺の太鼓」を力いっぱいたたきます。しかし、まだ自分のたたき方には納得いかないといいます。「この太鼓をたたきこなすこと、それが俺の目標です」



自分の成人式、振り袖で太鼓をたたいた

天野奈美さん(牧野)
後藤智美さん(小山)

 天野奈美さんと後藤智美さんは、小学生のときからの友達で大の仲良し。その二人が太鼓を始めたのは20歳のとき。牧野太鼓の日置さんの食料品店で、二人ともアルバイトしていたのがきっかけ。「もちろん、太鼓をたたいたことはありませんでしたが、二人でやってみようか、と思って」
 二人の一番思い出に残っているステージは、自分の成人式。11月に太鼓を始めた二人は、翌年の1月、自分たちの成人式で太鼓をたたくことを決意。「成人式の前は、仕事を終えてから毎日練習しました。全体の練習が終わった後も、二人で残ってバチをふったり」平成 年1月15日文化会館、二人はついに晴れ着姿で太鼓をたたきました。「最高の思い出になった成人式だった」と二人。
 「太鼓をたたいているときは、無我夢中。仕事など他のことはは考えられないですから」二人にとって、太鼓はストレス発散にもなるようです。
 また、太鼓を通して多くの人と知り合うことができたのも、「やってよかった」と思うこととか。「子供から大人まで、世代の枠を越えて、多くの人と知り合えました。子供たちと一緒に太鼓をたたくのは楽しいですよ」天野さんと後藤さんは、後ろで子供たちを見守りながらバチを振ります。



アメリカで家族一緒に太鼓をたたきたい

ジェイソンさん(アメリカ)

 ニューヨーク出身のジェイソンさん。5年前に来日し、群馬県で奥さんと知り合い結婚。3年前に美濃加茂に移り住み、市内の幼稚園で英語の先生を務めていました。
 牧野太鼓を知ったきっかけは「市役所を訪れたとき『太鼓の先生を教えてください』と尋ねたら、牧野太鼓の森さんを紹介してもらいました。森さんは太鼓の先生です」と、ジェイソンさん。ジェイソンさんは日本の楽器にとても興味があり、尺八や横笛にも挑戦中。「太鼓も笛も難しくて、最初は思ったようにできなかった。けど演奏しているとき、気分は最高ね」
 ジェイソンさんは練習を初めて見たとき、みんながタイヤをたたいているのにびっくり。「太鼓がない、と思ったらわざわざ僕のために太鼓を出してたたいてくれた。その音に感動しました」3年間でジェイソンさんはどんどん上達し、今では新しく入った子供たちにたたき方を教えるほどに。
 「夢は家族みんなで太鼓をたたくこと。アメリカにもっと日本の太鼓を紹介したいです」ダボ市での演奏を最後に、ジェイソンさんは美濃加茂を旅立ちました。新しく住む町でも、ジェイソンさんは太鼓グループを探して参加するそうです。




太鼓をたたいて子供も自信がついた

熊崎浩之さん(太田町)

 ステージに立ち、大勢の観客の前で演奏することが子供(秀昭くん)の自信につながれば、そんな願いで子供と一緒に太鼓を始めました。  太鼓をたたいているとき、子供は家でみられないようないい顔をしています。きっと気持ちいいんでしょうね。牧野太鼓は、親子で同じ時間を過ごす大切な場です。



少し緊張した初めてのステージ

高橋未央さん(古井町)

ー9月14日「障害者と市民のつどい」の出演を終えて…  楽しそうに太鼓をたたくいとこの姿を見て、「私もやってみたい」と思い、1週間前から太鼓を始めました。  今日が最初のステージで、少し緊張したけど、とても楽しくて感動しました。今はまだ1曲しかたたけないけど、もっとたくさんの曲ができるようになりたいです。



初めての太鼓の音に体が震えた

生駒剛くん(御嵩町)

 小山観音で牧野太鼓の演奏を聞いたとき、体が震えて心があつくなりました。無性に自分もみんなと一緒に太鼓をたたきたくなって。  大きな太鼓をおもいっきりたたくのは気持ちいいですよ。だけど、けがして太鼓をたたけず、ステージに立つみんなを横で見ていたときは悔しかったです。



8年間、太鼓と一緒に子育て

日置幸子さん(牧野)

 8年前に、子供と一緒に始めました。太鼓をたたくと気持ちいいですから、子供は卒業しましたが、家族の協力にも支えられて続けてきました。8年間、太鼓と一緒に子育てをしてきたような感じですね。牧野太鼓で、子供たちは大人とふれあう貴重な体験をしたと思います。



友達に会える練習が楽しみ

大杉えりかさん(牧野)

 楽しそうに太鼓をたたくお兄ちゃんやお姉ちゃんの姿を見て、「私も」と思い、4歳のときから始めました。学校では太鼓は習いませんが、太鼓をたたくのはとても楽しいです。太鼓を通してたくさんの友達やお兄ちゃんお姉ちゃんができました。友達に会える練習が楽しみです。



鼓動が心に響く 牧野太鼓 目次

鼓動が心に響く 牧野太鼓
人が集い、太鼓が生まれ、鼓動が響いた
太鼓はみんなの汗と涙の結晶だ
オーストラリアの大地に牧野太鼓が響きわたる
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