川浦川の自然   安藤志郎

 川浦川の岸辺にショウジョウバカマの花が咲き、ヤブツバキやヒカゲツツジの花が咲き始めると春がやってきます。冬の間、水量も少なくよどんでいたような川が、春の雨と共に生き生き流れるようになります。ヤマザクラ、コバノミツバツツジのピンクが色鮮やかに山々を彩ります。川辺を歩くと、ニリンソウやコンロンソウの花に出会います。共に春の山菜として食べることができる植物です。四季折々、この川は私たちに自然のすばらしさを教えてくれます。
 この川で忘れてはならないのはアジメドジョウです。春、生まれたばかりのかわいい稚魚が小石に付いた藻を食べにでてきます。アジメドジョウは、河川の汚染と共に急激に減少したドジョウの仲間です。市内で生息できる川はここしかありません。ホタルの幼虫よりもっときれいな水を必要とする魚です。同じような条件にすむ魚にカジカがいます。川の最上流にすみ、卵を雄が守り育てる性質をもっています。川底に20センチ程度の石がゴロゴロしていないと、産卵のための巣を作ることができません。不思議なことに、これらの魚は同じ三和町を流れる廿屋川にはいません。川浦川だけなのです。川底が砂や泥でなく、小石であることが重要なのです。新しくできた平古市の住宅付近は、これらの魚の産卵場所です。
 しかし、これらの魚も数が少なくなり、やがてこの川から姿を消す運命なのかもしれません。川底にヘドロが多くなり、水は富栄養化しています。



ネコギギ(別名クロザスとも呼ばれる)
伊勢湾・三河湾に流れる一部の河川のみに生息し、市内では川浦川に見ることができる。昭和52年には国の天然記念物に指定される。体長は10センチ前後、夜行性で昼間は岩間などに隠れている。



アジメドジョウ
中部・近畿地方の清流に分布する日本固有の淡水魚。体長は細長くて8〜10センチほどで、川底が砂利の部分にすむ。腹部は白色で、背部に褐色のはん点やまだら模様があるのが特徴。近ごろは水質の悪化により、減少してきた。



カジカ
ナマズの仲間で、体長は15センチほど。水生昆虫を主に食べ、雄はなわばりをもって雌を誘う。一部の種類のカジカは、ふ化すると海へ下り再びそ上するが、川浦川のカジカは海へは下らない。



カワムツ
全長15センチほどで、清流の流れのゆるやかなところを好む。成魚では、朱色の婚姻色が頭部と腹部に、白色の追星が頭部に現れる特徴をもつ。



安藤志郎
市内川合町在住。三和小学校教頭、岐阜県博物館学芸員などを経て現在は白川小学校校長。長年にわたり、市内のみならず県内の自然について調査・研究を進めている。主な著書に「岐阜ふるさとと動物」「続ふるさとの自然」(共に共著)「美濃加茂市史の自然編」などがあり、CD-ROM「長良川ー愛しき魚たち」も手掛けた。


川浦川物語目次

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